AIで簡単に作れる時代だからこそ気をつけたい、広告表現と法律の話——景表法・薬機法・業種別ルール
生成AIのおかげで、LPや広告文、サービス紹介ページを誰でもすぐに作れるようになりました。ただ、ここに新しい落とし穴があります。AIは日本の広告規制を考慮せずに、「魅力的に見える」文章を書いてしまうのです。
「業界最安値」「効果は実証済み」「満足度98%」
AIが出してくるこの手の頼もしいコピー、根拠を示せなければ法律違反になり得ます。そして公開した表現の責任を負うのは、AIではなく事業者です。
この記事では、AIでコンテンツを作る人が知っておきたい広告規制の基本を、業種別に整理します。
※本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の表現の可否は、必ず専門家や所管のガイドラインでご確認ください。
なぜAIの書くコピーは危ないのか
AIは「刺さる文章の型」を大量に学習しています。その型には、最上級表現(最も・No.1・唯一)、効果の断定(必ず・確実に)、権威づけ(専門家も絶賛)が多く含まれます。つまり放っておくと、広告規制で最も問題になりやすい表現の型を自然に使ってくるということです。
しかも文章として自然でもっともらしいので、書いた本人(=AIに書かせた本人)も違和感に気づきにくい。「自分で書いたら流石にこんな大袈裟なことは書かない」という表現が、AI経由だとするっと世に出てしまいます。
全業種に関わる「景品表示法」
業種を問わず適用されるのが景品表示法(景表法)です。特に引っかかりやすいのが次の2つ。
- 優良誤認: 実際より著しく優れていると誤認させる表示。根拠のない「No.1」「業界初」「満足度◯%」、実証データのない「効果あり」など
- 有利誤認: 実際より著しくお得だと誤認させる表示。根拠のない「通常価格からの割引」(二重価格表示)、「今だけ」と言いながら常時やっているキャンペーンなど
ポイントは「その表現の根拠資料を出せるか」です。No.1と書くなら調査の出典と時期、割引と書くなら通常価格での販売実績。AIは根拠の有無を知らずに書くので、根拠の確認は必ず人間の仕事になります。
業種別に上乗せされるルール
美容・健康食品・サプリ: 薬機法
化粧品や健康食品は、謳って良い効能効果の範囲が細かく決まっています。化粧品で「シワが消える」「肌が若返る」は範囲外ですし、健康食品で「痩せる」「病気が治る」は医薬品的な効能の標榜としてNGです。AIはこの区別を知らないので、「潤いを与える」(OK圏)と「肌質を改善する」(アウト圏)を平気で混ぜて書いてきます。ビフォーアフター写真の使い方にも注意が必要な領域です。
クリニック・治療院: 医療広告ガイドライン
医療機関の広告は特に厳しく、患者の体験談を広告に使うことは原則NG、ビフォーアフター写真も条件(治療内容・費用・リスクの併記など)を満たさない限り使えません。「絶対安全」「必ず治る」はもちろんアウト。AIに「クリニックのサイトの文章を書いて」と頼むと、体験談風のコンテンツや効果の断定を含む構成を提案してくることがよくあるので、この業種は特に注意が必要です。
不動産: 表示に関する公正競争規約
不動産広告には業界の公正競争規約があり、例えば「駅徒歩◯分」は道路距離80mを1分として計算する、といった細かいルールが決まっています。存在しない・取引できない物件を載せる「おとり広告」は論外として、「日当たり良好」「閑静な住宅街」のような主観的な表現も、実態と異なればトラブルの元になります。AIが書く物件紹介文はこの規約を前提にしていません。
その他の規制業種
金融・保険(金融商品取引法など)、士業(各士業法の広告規制)、人材(職業安定法)なども、それぞれ広告表現のルールがあります。「うちの業界には広告のルールがあるか?」を一度確認しておくことが、AI活用の前提になります。
公開前チェックリスト(AI生成コンテンツ用)
- 「No.1」「最◯◯」「唯一」に、出典・時期つきの根拠があるか
- 効果・成果を断定する表現(必ず・確実に・絶対)が残っていないか
- 割引・価格表記に根拠があるか(架空の通常価格になっていないか)
- 体験談・ビフォーアフターが自業種のルール上使えるものか
- 自業種の広告ガイドラインを一次情報(所管官庁・業界団体)で確認したか
- 根拠資料を保存してあるか(問い合わせが来たら出せる状態か)
なお、AIに「薬機法に配慮して書いて」と指示するのは一定の効果がありますし、書いた文章のチェック役として使うのも有効です。ただしAIの「配慮しました」は保証ではありません。最終確認は人間、判断に迷うものは専門家。この順番は変わりません。
「AIが書いた」は言い訳にならない
表示の責任は、それを公開した事業者にあります。AIで作るのが簡単になった分、「書ける」と「出していい」の間のチェックが、これまで以上に大事になりました。
弊社ではWebサイト制作の際、こうした表現面のリスクに気づいたらお客様と一緒に確認し、必要に応じて専門家への相談をおすすめする進め方をしています。「AIで作ったページ、このまま公開して大丈夫か不安」という段階のご相談もお気軽にどうぞ。